最貧困女子という言葉を知っていますか?
このノンフィクション本によって有名になった言葉です。
著者が貧困状況にある女子数人にインタビューし、彼女たちの最貧困に至るまでの遍歴と、現在の悲惨な状況について書いた本。 とても面白い本です。
家出少女の未成年から大学生、20代や30代の若い女性がパパ活やSNS、ストリートの立ちんぼとして売春をしていることが問題になっています。貧困に陥っている若い女性が多くなっており、トー横界隈、グリ下界隈、大久保公園での援助交際という名の個人売春(ネットでは”交縁”とも呼ばれています)が、各種メディアでも社会問題として取り上げられています。
『最貧困女子』(幻冬舎新書)の紹介
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まずは基本:貧困と貧乏の違いについて
◆貧乏=お金が無い
貧乏は「貧乏でも明るい家庭」とか、「子どもの頃は貧乏だったけど楽しかった」という発言もあるように、貧乏=不幸せ、ではありません。
◆貧困=お金が無く困窮している
貧困は、お金が無いことで困窮している状態。つまり、貧困=不幸せな状態にある、ということです。
最貧困女子とはどんな女子?
最貧困女子とは最も貧困な状況にいる女子ですが、この本ではある特定の女子を指しています。
彼女達の今の状態を説明すると、出会い系アプリで個人売春をして月数万円の収入で1人暮らし(またはシングルマザー)をしているが、家賃滞納で夜逃げを繰り返したり等、かなり困窮状態にある女子のこと。
なぜ、そんな生活をしているのか?悲惨にも最貧困女子になってしまうのは、そこに至るまでの経緯(人生)があります。
How to be 最貧困女子 /どうやって最貧困女子になるの?
セーフティーネットが無い
「貧困に至る3つの無縁」という言葉がある。
【貧困に至る3つの無縁】
- 血縁との無縁
- 行政との無縁
- 地域との無縁
◆【血縁との無縁】
最貧困女子は子どもの頃にDV(家庭内暴力)を受けていた人が多い。積極的虐待もあれば、ネグレクト(消極的虐待)もある。
ネグレクトとは、普通の親のように子どもをケアしていないこと。例えば、毎日同じ服、不潔なまま放置、食事はカップラーメンばかり、など。
両親を信頼出来ず、憎しみすら覚えている。縁を切りたいとすら思っているので、大人になってからは一切連絡を取らず、困窮しても親も親戚も頼りませんし、実際、親は頼りになりません。
◆【行政との無縁】
家庭内に問題を抱えた子どもが中高生になると、夜の街を徘徊する不良少年少女となります。家に居たくないのです。
同じ境遇の仲間と夜の街にたむろし、女の子は先輩の勧め(または命令)から、援助交際を経験。
そんな生活なので、警察の補導対象となります。
家庭内暴力など、問題のある家に居たくない彼女達。本当は警察や学校や役所が、彼女達にシェルターや施設など、逃げ場を提供してあげればよいのです。しかし、手続きや条件など、いろいろ面倒なので、警察は彼女達を無理やり家に帰してしまう。
学校も同じ。不良少女として嫌われている彼女達。彼女達の良くない行いを、学校は家庭に報告します。
これらの体験から、最貧困女子に特徴的な「行政への強い不信」が生まれます。
- 「国や市町村などの行政は自分を助けてくれない」
- 「行政機関に見つかると自分にとって困ったことになる」
そんな強い信念が出来上がってしまうのです。
◆【地域との無縁】
不良少女は恋愛も結婚も早い。いつも夜に集まっていたグループの仲間も、彼氏と一緒になったり、結婚したりと、一緒に遊ばなくなっていきます。
- 「いつまでも地元に居てもつまらない」
- 「都会に行きたい」
先に都会に行き暮らしている先輩もいるので、少女は家出同然で都会に向かいます。
地元を離れることで、地域コミュニティー、地元の仲間との縁が途絶えます。
都会で生きる困難
DVなど問題のある家庭に育った子どもは、それが原因でコミュニケーションや社会性の面で性格に問題があり、うまく周りと協調出来ない子が多い。そのため、コンビニなどのアルバイトを始めても、残念ながら、すぐに辞めるかクビになってしまう子が多いのです。
もともと中高生の頃に援助交際の経験があるので、彼女たちは都会に出てきた早い段階で風俗業界で働き始めます。
容姿の良し悪し
最貧困女子に落ちる最後の原因です。
10代後半で都会に出てきた少女。最初は「若さ」が魅力となり、金払いのよい風俗店で働けます。しかし、20代になると「容姿(見てくれ)」での評価になります。
最貧困女子は残念ながら「容姿に恵まれていない女子」なのです。
風俗業界はもともとストレスも多く、同じ店で長く働いている女性はいません。無断欠勤、無断退職は当たり前。勤務態度も悪く、どんどん辞めたり、クビになったり。店から店へと勤務先を移動します。
容姿に恵まれない女性が風俗店の面接に行くと、
- 「おまえみたいなブスが来るところじゃない」
- 「整形とダイエットして出直してこい」
など、酷いことを言われ不採用。そして、どんどん収入の安い風俗店へと下っていきます。
最底辺の風俗店
そして、最底辺の風俗店で働きますが、最底辺風俗はとても長期で働ける待遇の店ではありません。そこを辞めて、出会い系サイトで個人売春をしてお金を稼ぎだします。
ちなみに、『最貧困女子』に出てくる最底辺の風俗店の名前はサンキューグループという店です。下記のリンクは摘発された時の記事ですが、サンキューグループは今でも営業を続けています。
著者が最貧困女子を取材していて、彼女達から「最後に勤めていた店」としてよく名前が出てきた店です。
正確には店舗ではなく、デリバリー風俗嬢派遣の会社。女性はサンキューグループに登録します。客はサンキューに風俗嬢の派遣先を連絡(自宅やホテル)。女性はサンキューに言われた派遣先でお客に性的サービスを提供します。
- お客が支払う料金:30分3900円
- 風俗嬢の受取る金額:2500円
この金額で、本番のSEX(違法だが店が強要)、アナルセックス、SM、食糞など、ほとんどNG行為無しの、すべてのサービスをしなければなりません。
こんな店、辞めて当然です。とても続けられないでしょう。
出会い系サイトで売春
そして、彼女達は出会い系サイトで個人売春を始めます。しかし、個人売春ではお客は簡単に見つかりません。まして、容姿に恵まれていない彼女達です。
「お客がこのまま見つからなかったら大変だ」
そういう焦りと不安を感じながらも、「生きようと」、毎日頑張っています。
最貧困女子の中にはシングルマザーもいます。また、知的障害を疑わせる女性もいます。
『最貧困女子』は、そんな大変な困窮状態にありながら、必死に生きようとしている女性たちのドキュメントです。
ちなみに、最貧困女子の意外な特徴は「借金が無い」ことです。借金に対する強い恐怖心も彼女たちの特徴だそうです。
売春にはリスクが伴います。梅毒など性病のリスク管理をしているかどうか、とても心配です。
映像作品:最貧困女子ドキュメンタリー
最貧困女子を扱った番組もあります。
【東京貧困女子】「昼の仕事1本じゃ無理」過酷な1人暮らし…なぜ夜の仕事を?|#アベプラ《アベマTVで放送中》
他にも、Youtubeでは消えてしまいましたが、2014年第23回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『刹那を生きる女たち』約45分という作品もあります。 3人の女性が登場します。
- 再貧困女子
- シングルマザー
- 精神病
最初の1人目の女性が幻冬舎新書『最貧困女子』に出てきたタイプの女性です。
大変興味深く面白いドキュメンタリーです。顔出しで出演した女子たち勇気にも感服します。試聴をおすすめします。
コロナでの外出自粛や営業自粛が緩和されていきます。風俗嬢には優しく接してあげましょう。
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